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あなたに綴る。とあるブログの黙示録

 

ユザワヤ新宿店閉店から見る手芸店の実情を元業界関係者が考察する

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普段あんまりこういう話を書かないんですが、少し気になってしまったので(古典部風)、ちょっと現在の手芸業界の考察記事なんかを書いてみようかなと思います

前提としてですが私は近しい業界に以前いた事があって、尚かつ業界の中でちょこちょこ社長さん達とかには割と面識があったりします

 

昨日こんな記事がYahooニュースに載っていて読んでいました

10月下旬の夕方、大型手芸用品店「ユザワヤ新宿店」は文化祭の準備や編み物シーズンの到来で学生や仕事帰りのOLの姿が多く見られた。同店舗は2009年11月に新宿タカシマヤタイムズスクエアに入居した比較的新しい店舗だ。ただ、11月6日に閉店し、11月16日にオープンする下北沢店に”移転”することが決まっている。

新宿店だけではない。ユザワヤは同じ2009年3月に銀座店を、12月に渋谷店もオープンしたが、銀座店は2015年1月に、渋谷店は2012年6月にそれぞれ閉店している。都心店舗が短命に終わった背景には何があるのか。

手芸「ユザワヤ」の都心店で閉鎖が相次ぐワケ | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 ユザワヤが新宿店の閉店

記事の中ではこんな風にも書かれています

新宿店に関しては「高速バスターミナルのバスタ新宿ができたことで新宿南口エリアの価値が上がり、オーナーの高島屋が百貨店を増床させたいということで契約更新に至らなかった」と話す。

ただ、都心部の店舗は近隣に移転せず閉める一方で、柏店や川崎店は閉店後も近隣に移転再オープンするなど、出店そのものは継続している。「テナント料の圧縮が進み安定的な利益が出せる体質になる」(舩渡執行役員)。

今後は高齢者施設向けに手芸キットの販売を強化するなど、手堅く地道に売上を伸ばしていく方針だ。

なぜユザワヤが新宿で物件を探さなかったのか、それは商品を置く為の面積の関係もあるのだとは思うのですが、東京で服飾関係者や手芸関係者の間では有名なもうひとつの大手手芸店「オカダヤ」の存在があったのではないかと思います

ちなみにユザワヤ新宿店の場所は下記となります

  • 10:00〜20:00営業
  • 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2 タカシマヤタイムズスクエア11F

新宿南口出てすぐのタイムズスクエアの11階ですね

オカダヤ新宿店は下記の住所

営業時間10:30〜20:30

新宿東口を出てアルタ左脇のあたりに本館があります

 

元々手芸店というのは商品点数がとても多く、その数5万点くらいでしょうか

他店と比較して商品力を前面にアピールする場合にはそれなりの面積が必要です

ユザワヤ新宿店がタカシマヤ11階のフロアだったのに対して、オカダヤ新宿本店は服飾館がB1〜6階、生地館がB1〜5階となっています

やはりスペースによる商品力の問題もひとつあったのかなとは思います

 

オカダヤですが普通に考えてB1〜5階までが生地とかっていうのはすごい事ですよね、ここには同じく新宿に本校がある文化服装学院の生徒や恵比寿のバンタン、エスモード、目黒のドレメなんかの服飾専門学生も多く来ているのではないでしょうか

とても若い層に受けている印象のお店だと思います

ユザワヤの商品構成

これはマニアックな話になりますがユザワヤはPB商品(独自のプライベート商品)が多い小売店です、なぜPB商品が多いのかといえば小売値をメーカーで設定していない商品なんで自分で設定する事が出来るからなんです

これには利益率を上げる事が出来るというメリットがあるのですが、近くに大手手芸店のオカダヤがある事でPB商品のデメリットが出て来た形ではないかと思います

そのデメリットというのはPB商品を押すあまり、他のメーカーの商品が少なくなった部分にあるのではないかと思います

面白い話で、物作りをする方というのは糸ひとつとってみても太さや細さは元より、同じ番手でも質感を気にしたり、同じ様なハサミであっても切れ味を気にしたり、そういった部分て出て来るんです

一回他の手芸店で買って良かった糸や針、ハサミなんかがあったとしたら同じ物を探してしまうのが御客様の常なのです

ユザワヤとオカダヤの商品構成の違い

毛糸などは若い人は使わないと思いますが編み上げて足りなくなると同じ種類の同じ「ロット」の物を探すんですね

同じロットというのは同じ釜で染めた毛糸の事です

釜が違うとそれだけで色むらが出るので御客様はかならず同じ種類の同じロットで揃えます。これはひとつの例ですが細かい資材ひとつひとつに作り手はこだわる部分があります

客観的に見ていると競合店であるオカダヤの方が利益率は低いけれど色々なメーカーの商品を取り入れていた印象があります

そういった部分もあるのかなと個人的には思うのですが、これには客層の問題も出てくるでしょう

ユザワヤとオカダヤの客層の違い

ユザワヤがタカシマヤの11階にフロアがあるのに対してオカダヤは昔からあるんであれですが、新宿歌舞伎町に店を構えています

ユザワヤ-20代中盤〜お金を持っている高齢者層

オカダヤ-10代後半〜30代

こんな感じではないでしょうか

どちらも立地としては十分良いのですが、何故か若い子はみんなオカダヤにいってる印象でした(生地とかがファッション向けだったのもあるのかな)

記事の中ではこの様にも語られています

ユザワヤ商事の舩渡義郎執行役員は「(ユザワヤの顧客である)趣味で手芸をする人は所得が高い人が多く、目的を持って来店するため高層階でも集客でき、テナントとして引く手あまただった。当時は浮き足立っていた」と振り返る。

まあやっぱりあんな所にお店出す位だからリッチな層を狙ってるよね

なぜリッチな高齢者の層を狙うのかと言うと理由があるんですね

実は手芸で一番大きな金額が動くのは「毛糸」だからです

その次が「生地」、その次糸や針などの服飾資材でしょうか

手芸ブーム 

たぶんこれは手芸をやっていた50代60代くらいの人しか知らないと思うのですが20年以上前でしょうかマフラーを恋人にプレゼントする様な時代にはネットも何もなかったので、主婦の方とかは家で手芸をしている事が多かったんです

この時はバブリーな時代で私の知ってい個人経営者の方はその収益でマンション一棟建ててしまったとか、トラックをビルに突っ込んで商品を出し入れする程、商品が大量に動く景気の良さだったと言います。今では想像つかないですがiphone並みに売れてたのではないでしょうか

時代の流れによるニーズの変化

そういった事もあり金額の大きな商品が売れる事を計算してターゲットを決めていたのではないかとと思います

ですが時代は変わっているんですよね、毛糸が流行るかって言うと難しい話ですし、御客さんの懐も少し寂しくなった部分もあるのではないでしょうか

売れ行き低迷の解決策

もう業界離れているしいいでしょって事で勝手にユザワヤをコンサルすると、手芸店が無くなっていったのは手芸店の店員のレベルが低くなったのもひとつの要因があります

これにはアルバイトが増えたり循環が早くなった事も理由として上げられるでしょう

5万点の商品を覚えようと思うと1年は最低で掛かるんですね

売り場ごとであってもそれなりの知識を得るには従業員の定着率を上げる事や、教育をしっかりしていく上でも必須となるでしょう

そして手芸をされている方でお店に行って「教えて貰った方」はいますでしょうか?

どうやってここのビーズ編みをするのか、毛糸の編み方は?刺繍の刺し方は?パターンを元に作る生地の縫製仕様は?こういった物を作るにはどうしたらいいのかそういうのはなかなか聞ける感じではないのではないかと思います

従業員は商品の知識はあってもほとんど開けて作った事はないのではないでしょうか?

昔の小さい小売りの手芸店に人が集まったのは実は一緒に物作りしたからなんですね

一緒にわいわいお茶でも出して貰って作って相談して、そんな場所があったからこそ人が集まったんです

いまのこの場所というのは再現する事が難しいのが現状で「キット」という説明書や仕様などを書いた物を見ながら作る事になるでしょう

ですが分からない時にお店にいって聞けたり、その場で出来たりしたらまた来店してくれますよね?

これってすごい大事な事で、Yahooニュースに従業員の態度あまり良く無いなどコメントがとかありましたが、それは知識や経験を含めた余裕がなかったのもひとつなのかなと勝手に思ったりしています

もう一度人の回し方や御客様との交流の場等を考えていく事で人がもっと来てくれるお店になるんではないでしょうか

思い切って商品の封を開けて現場の従業員達に使い方や作り方を教えてあげるのは実は他の業種では考えられないかもですが大事な事なんですね

現状ネット購入が広まった事、手芸のユーザーの高齢化など難しい部分もありますが、舵取りひとつでまた来たいと思わせられるお店になるのではと思います

ちょっと気になったのでつらつらつらと書かせて頂きました

ユザワヤは学生時代に御世話になったお店でもあるので頑張って欲しい所ですね

今後の活躍に期待するという事で、それでは!

 

☆実は東京の中でも色々な手芸店が存在しています

場所によって全然商品の幅が違ったり、扱っているメーカーの違い等もあるので気になる方は数少ない手芸店のガイドブックを参考に

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